内田けんじ監督作「運命じゃない人」「アフタースクール」

池袋新文芸座で映画を見ました。
内田けんじ監督の「運命じゃない人」「アフタースクール」の2本。
簡単な紹介は本文最後に記載します。

はじめに:
運命じゃない人」「アフタースクール」ともに今まで見た事のないストーリー展開に驚きました。言葉で表現するのはすこし難しいのですが、できる限り言葉で印象に残った点を以下にまとめます。

1.構成力
構成力とは、ストーリーの構造とその組み合わせの妙を指しています。
内田けんじ監督の特徴だと私は思いますが、両作品ともに単独の主人公視点で物語は進みません。すべての登場人物(台詞のある人物に限る)がある場面では主人公となります。同じ時間軸上に存在する主人公たちの視点を交えながらストーリーを追う事で、観客に対し出来事の裏側を観測させます。ストーリーそのものは単純なコメディですが、主人公たちの視点にそれぞれの利害や思惑を投影することで、ストーリーに奥行きを与えているように思います。これらの主人公たちの視点をパズルのように組み合わせることでストーリーの全容が見えてきます。この組み合わせが絶妙で、観客に先の展開を読ませつつ、それを裏切るラストに導く監督のセンスに惹かれます。欲に翻弄される人々の様子を絶妙に切り取る内田けんじ監督の構成力に驚きました。

2.意外性
意外性とは、私の予想の範囲を超えてストーリーが展開していく点を指しています。
意外性は「アフタースクール」を見たときに感じました。「アフタースクール」では監督がある程度意識して観客をだましているように思います。それはストーリーの展開を予期させる、様々な伏線をあらかじめわかりやすい形で用意してあると感じる為です。例えば、俳優さんに染み付いたイメージも上手に使いこなすことで意外性を演出しているように思いました。

最後に:
最近見た邦画の中で最も勉強になった映画です。


以下は新文芸座オフィシャルサイトより転載
http://www.shin-bungeiza.com/schedule.html

  • -

運命じゃない人

(2004/クロックワークス

監督・脚本:内田けんじ
出演:中村靖日霧島れいか山中聡山下規介板谷由夏
カンヌ映画祭 フランス作家協会賞(脚本賞)、他
キネ旬5位・脚本賞 ★毎日映画コンクール 脚本賞、他

■どこにでもいる気弱なサラリーマンを主人公に、5人の男女が繰り広げる運命の一夜。緻密に計算されたシナリオで各映画賞の脚本賞を総なめにした、内田けんじ劇場用初監督作品。頭フル回転で観よ!


アフタースクール

(2007/クロックワークス

監督・脚本:内田けんじ
出演:大泉洋佐々木蔵之介堺雅人常盤貴子田畑智子

■主人公は母校の中学校で働く教師。彼のもとに、かつての同級生だと名乗る怪しい探偵が訪ねてくるが……。たっぷりの仕掛けと、驚きの展開、そして爽快なラストが待つ、内田ワールドふたたび!

  • -