工場研修の終わり

浜松での工場研修が終わった。
長いようで短かった3ヶ月と17日間。
初日から最終日までライン作業に従事した。仕事の内容を例えるならば、製造ライン上を流れる刺身パックにタンポポ(食用菊)をのせる作業といえる。
1日あたり8時間30分(休憩55分を含む)、早番(5:00-13:30)と遅番(13:30-22:00)の2交代制勤務に従事し、ずっと立ち続ける(2時間経過ごとに5分間の休憩があった)作業だった。
同期の一部は同じ工場で生産管理や改善提案の作業を与えられている。改善提案のためラインの見学に入っている同期をライン作業中に目にすると、気持ちが萎えそうになった。職に貴賤はないと思う。しかし、管理者と作業従事者のいわば主従関係を味わうと複雑な気持ちになる。
「会社は何を考えているんだ!」と憤ったのも仕事を初めて3週間が経過する頃までだった。それ以降は不思議と環境を受け入れる事ができた。もちろん細かな不満は多くあったが、環境に慣れてきた事による心境の変化だと思う。
環境に慣れると、ライン作業は苦痛ではなくなった。正確に言うと、精神的な苦痛は緩和され、肉体的な疲労の解消が日々の課題となった。ライン作業は単純な動作の繰り返しであり、作業を体が覚えれば、あとはほぼ何も考えなくても手間取る事はない。
そのため、思考を巡らすには最適の時間だった。一日のほとんどを妄想で過ごした。それは、ブログにはとても書き込めないものから、家に帰ってから作る食事の内容まで幅広く考えを巡らせた。なかなかに充実したライン作業であったように思う。
これまでの話を振り返ると、どうやら私が所属する会社は製造業であるらしい。入社して工場研修を始めるまでそれに気がつかなかった。正確には製造業である事は知っていたのだが、それは表面的な物でしかなかった。つまり、製造の過程を写真や映像で眺めただけで、製造とはこんなものだというイメージを作り上げてしまったのである。イメージだけでは、現場の苦労や喜びは見えてこない。
先にも述べたが、私は以前「会社は何を考えているんだ!」と憤っていた。ただ、それはイメージだけで製造を知ったつもりになっていた頃の考えだった。
経験の連なりを知識と呼ぶならば、工場研修を終えた今の私は、以前の私よりも少しだけ知識を得たと言える。
これが工場研修の目的ではないかと私は思う。