No pain, no gain@ゴールウェイ

No pain, no gain.
ホストファーザーのマーティンが私に言った言葉です。
私はこの言葉の意味をこう解釈しました
「苦労しなければ何も得る事はできない」
彼は退役軍人で生粋のアイリッシュです。御年64歳。
初対面の時点で、なんとも気難しい雰囲気をビンビン放っていました。私は当初この人と理解し合えるのか深刻に悩みました。
しかし、一つ屋根の下で生活を共にすることで、普段の彼の様子が見えました。
マーティンは本当に良く働きます。孫の面倒を見ながら、部屋の掃除も済ませます。またホストマザーがソファーに腰掛ければ、そっと紅茶を差し出す愛妻家です。また、孫を優しく包み込む大きな手にはツバメの入れ墨。軍隊生活が長かったためか、時折Fワード飛び出しますが、普段は大変穏やかな人です。
とはいえ、一度チェーンソーを持って、居間に入って来たときは感慨深いものがありました。
そんな様子を眺めていたら、ある寒い日の夜、彼が私の部屋の扉をたたきました。
「薬を持っていないか?」
彼は朝からずっと頭痛を我慢していたそうです。
私は常備薬として持っていたEVEを与えました。
そして、この出来事以降、彼の方から私に声をかけてくれるようになりました。
居間でテレビを見ていれば、適宜私に番組の解説をしてくれます。正直何を言っているのか全く理解出来ませんでしたが、一方的に話し続けてくれる事が、なによりも助かりました。
今思い起こせば、私も彼もバラエティーより教養番組が好きなタイプなので、気があったと言えます。
彼は常々、人は言葉を交わし、互いに尊敬しあう姿勢が重要だと私に説きます。
このとき、私はある有名なアニメーションディレクターが言っていた「人の錆は対話で落とす」という言葉を思い出しました。
そしてつい先日、常に掃除を欠かさない彼に、何故掃除するのかと問いました。彼は手を休めてこう答えました。
「掃除はすべての基本だ」
彼はつい先ほどまで、廊下を掃除していました。
私の英会話の能力向上分は、そのほとんどが彼との会話によって生じた成果です。
彼に出会えて、本当に良かった。